可能性の海:Gorilla DAO

By Greg Hall Published: 4月 22, 2021

先月発足したGorilla DAOにより、ビットコインSVに初の自律分散型組織が誕生しました。Gorilla DAOが、非公式ながらもビットコインSVにおいて要となる存在になりつつあります。これは、これまでの経緯から学んだ教訓、新しい技術がもたらす期待、そしてより広いコミュニティに価値あるものを提供するという意欲の結晶でもあります。

設計上Gorilla DAOには管理者はいないものの、期せずして「顔」を持つこととなりました。Gorilla DAOの創設者のパトリック・トンプソン氏は、急進的でリーダー不在の組織というコンセプトに魅力を感じていました。

「ビットコイン業界の他の企業と話をしていて気になったのは、例えば大企業では利用できても、小売市場の人々には利用できないツールを作っているということです。」とトンプソン氏は説明します。

「マイクロソフトのような大企業はその気になれば新しい電話やコンピューターの開発を決断できますが、個人レベルでは真に新しく革新的なものを構築して世界に出すためのリソースを持ち合わせていません 。」

「実現したいアイデアがあっても、それを行うためのノウハウがありません。この問題を解決するのが、DAOです。必要なすべてのリソースとツールが1か所に揃い、プロジェクトを進めるための選択を行うことができます。」

現状を考えるとDAOのコンセプトは革命的です。しかし、この概念を理解し、Gorilla DAOが達成しようとしていることを理解するには、比喩的にも時系列的にもさかのぼって考える必要があります。

 

企業形態の歴史

事業活動が組織化される方法は絶えず変化しているものの、近代の歴史やあらゆる地域において大抵の場合、同一の枠組みによって規定されてきました。影響力は非常に大きいものの、変化は徐々に起こるものです。ビジネスベンチャーは古代文明の時代から特別な権利を享受しており、今日最も一般的な構造である合名会社や有限責任事業会社(LLP)でさえ数百年も前,既に認知されていました。

これらの構造に共通する特徴は、代表的な意思決定者の存在、つまり組織のハイレベルなコントロールを任されている人の存在です。リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ(有限責任事業組合契約を基礎に形成された企業)では、マネージングパートナーが他のパートナーの意思決定を監督したり、株主に代わって事業の方向性を決定するために最高経営責任者や取締役が選出される場合があります。ここから企業階層が生まれます。

この枠組みは、必然性によって生まれました。例えば、よくあることとして企業株主は企業の一部を所有しており、企業の重要事項の決定に投票権を持ちます。ただし、特に大規模な組織(特に公開会社の)の場合、株主の事業自体への関与は稀です。つまり企業の経営陣は株主の実質的な代理人であり、株主の意向を実現するのではなく、株主に利益を還元することを期待されているのです。

この構造には、欠点も内在しています。取締役会(最高経営責任者を含む)の行動を管理する規則はあるものの、実際にはその有効性は取締役会がそれを実施しようとする意向に依存するのです。同様に、企業全体の階層や権力構造に重点が置かれ、イノベーションが阻害される可能性もあります。

こうした欠点にもかかわらず代替手段がないことから、ごく最近まではこのシステムが最良のモデルとなってきました。

 

ブロックチェーン/ DAO問題解決策

ブロックチェーンが革新的なのは、中央集権的な権限を持たないシステムを可能にする点です。「仲介者」を必要とせず、検証可能な情報の公開リポジトリとして機能する、分散型で安全性が保証され改変不可能なデータベースがブロックチェーンです。トランザクションコストを大幅に削減し、デジタルトークンや自己実行型契約などのアプリケーションを実現できる可能性があり、インフラストラクチャが要求される範囲でそれらも分散化することができます。

おかげで、新しいコーポレートガバナンスの方法が可能になります。自己実行型契約により、事前に定義されたルールに従って自らを管理する組織を構築することができます。ブロックチェーンによって生み出された一種のトークンを使用することでルール自体を投票制にすることが可能で、実行されたアクションは公開台帳に直接記録されるため、従来の企業構造では前例のないレベルの透明性と監査可能性が実現します。

これらすべてを実現したのが「DAO」です。アーロン・ライト氏とプリマヴェラ・デ・フィリッピ氏は「Decentralized Blockchain Technology and the Rise of Lex Cryptographia(分散型ブロックチェーンテクノロジーとLex Cryptographiaの台頭)」の中で、このイノベーションを次のように説明しています。

「これら組織『DAO』は、ソフトウェアを使用して従来のコーポレートガバナンスの特定の概念を再実装し、当事者が正式な企業構造のメリットを享受できるようにすると同時に、非公式のオンライングループの柔軟性と規模を維持することができます。」

「これらの組織は、人間の関与なしに自律的に運営することも可能です。DAOは資源を所有、交換、取引し、他の人間や機械と相互作用することができます。」

これにより委任による管理の非効率性が軽減され、権力が再集中することで、組織の脆弱性(個人によって組織の最善の利益が代弁されるとは限らない)が軽減されます。組織に利害関係がある人は、組織がどのように管理されているか、より完全に(完全ではないにしても)把握することができます。

「DAOはメンバー全員が平等であり、リーダー不在の構造であると捉えています。」とトンプソン氏は言います。

「企業構造では、最高経営責任者または会長がトップにいて、次に最高技術責任者や最高財務責任者などがいます。企業では、さまざまな階層やレベルが存在するヒエラルキー構造になっています。ピラミッド型で、下の人は上の人に比べて権力がありません。」

「革新的なアイデアは、それを実行に移せる決裁権限者に到達しないかもしれません。」とさらに付け加えています。

DAOモデルは、これらの問題すべてまたはほとんどの解決を約束するものではありません。DAOは、現在当たり前とされている慣習に挑戦する新しいガバナンスの方法を提示するものです。株主と経営陣の間に大きな隔たりがあるのはなぜでしょうか?企業の権力が少数の個人に集約されることは、本当に避けられないことなのでしょうか?

 

初期のDAO

おそらくDAOの最もよく知られている実装(イーサリアムネットワークに基づく「The DAO」)は短命であり、大失敗に終わりましたが、DAOの歴史においては重要な部分でもあります。クイン・デュポンが 「Bitcoin and Beyond」の一章で次のように記しています。

「The DAOは、アルゴリズム権限の新しい形式を理解しようとする試み、自律分散型システムのための実用的なガバナンスモードを介する取り組み、インセンティブの設計および行動のモデル化が失敗する方法を理解するための実例として重要な存在です。」

The DAOは、投資家が管理するベンチャーキャピタルファンドとして構築されました。各投資家には投資額に応じてデジタルトークンが割り当てられ、The DAOに提出された提案に対する議決権が付与されました。The DAOは完全な分散型ではなく、合法性やその他の実務的な懸念事項について提出された提案を精査することを任務とする管理者が存在しました(運営者がセキュリティの乱用による悪影響を管理しようとしたため、分散型であることも疑問視されるようになりました)。しかし、投資家は経営陣に依存することなくThe DAOの資金の用途を決定することができ、投票から利益の還元実施までのプロセスはイーサリアムブロックチェーン上のスマートコントラクトのネットワークによって管理されていました。

The DAOの失敗はセキュリティの悪用によるもので、投資家がプロジェクトに投入した資金の約3分の1が失われました。その後のごたごたにより、最終的にThe DAOの挑戦は終わることとなりましたが、組織の目標である分散化、そして脅威に対する調整および迅速な対応の必要性との間の葛藤を浮き彫りにしました。

 

DAOからGorilla DAOへ

このような旺盛な企業革新への意欲の表れにより、ビットコインSVを使用したDAOの実験が始められるのは必然的でした。そこで登場したのが「Gorilla DAO」です。

Gorilla DAOに参加するには、「エイプ(Ape)」トークンを購入する必要があります。これは、メンバーから提出された提案を決裁するための投票権に相当します。投票権があれば、提案することも可能です。

「提案をしてそれに投票してもらうことで、何が実現可能になるかは未知の世界です。そういう意味で、メンバー全員に発言権があり、誰でもアイデアを出すことができます。」とトンプソン氏は言います。

Gorilla DAOのメンバー間の交流は、Slackと違ってサブチャネルに分割された専用のチャットルームで行われます。この中には、開発者が投票システムの構築などの特定のタスクに取り組むためのチャットルームとなっていますが、必ずしもプロジェクトに直結しているわけではないものの、DAOメンバーシップに関連する他の関心に値するトピックもあります。

DAOの概念について読み進む上で、必然的に1つの疑問が生じます。明示されたな方向性がないならば、トンプソン氏はGorilla DAOの将来についてどのように考えているのでしょうか?

「ブロックチェーン業界の外でDAOを説明するときの会話には、時間がかかります。有限責任事業組合や他の形態の企業に慣れているので、すぐにピンと来るようなものではなく、DAOが何であるかが理解されないのです。『誰がリーダーで、DAOは何をするためのものなのか?』と聞かれたら、『メンバーがやりたいことをやるものだ』と答えています。」

「他のDAOとの差別化要因は、自分たちの進むべき道を明確に打ち出しているかどうかです。イーサリアムの場合、DAOが立ち上げられた時点で最初からDAOが何をするのかが明確で、つまりイーサリアム上に構築されるビジネスに投資するものでした。」

「Gorilla DAOはそのように明確なプランを打ち出したものではなく、本当にメンバーがやりたいこと、そして行き着きたいところに行き着くものなのです。」

Gorilla DAOがどのように機能することを意図しているかは、プラットフォームの立ち上げから数日後、数週間後に見ることができるでしょう。DAOから提出された最初の提案は、Gorilla DAO自体の管理方法を決定するルールとガイドラインである基礎を築くために協力するメンバーに関するものでした。

Gorilla DAOはウェブサイトのチャットルームを介して運営されており、投票は創設者によって手動で集計されますが、最終的にはすべての投票がオンチェーンで行われる予定です。ユーザーは例えば、「DAOはXサービスの提供にX人を雇うべきか?」などと特定の投票チャネルで提案を作成することができ、メンバーがその提案に投票します。

今日、Gorilla DAOにはすでに200人以上のメンバーが集まりかなりの盛り上がりを見せていますが、そのほとんどすべてがコミュニティ主導で行われています。

「実質的なマーケティングは全く行われていません。」とトンプソン氏は言います。

「このプロジェクトを気に入った人たちが、ゴリラの写真やミームをソーシャルメディアに投稿しているだけです。しかし、それが成功している理由であり、Twetchのようなプラットフォームが正しく機能するテーマです。そこでのユーザーはミーム経済の存在を理解し、また自らが発信する内容に人々を惹きつけるのにそうしたプラットフォームがどれほどの価値を持つかを理解しています。」

「もっと重要なのは、このおかしな現象をオンラインで楽しむのも一つであはるものの、背後に優れたメッセージと使命があれば、それが本当の意味で軌道に乗るということだと思います。」

 

リーダーレスをリードする

トンプソン氏は、DAOプロジェクトの初期段階での方向性の必要性とリーダー不在の組織が持つ究極的な目的との間で、バランスを取る必要があることをよく理解しています。

「DAOは作られる必要があるのです。つまり、複数の人が集まって作るか、私がしたように一人が作ってDAOとして活動させるかのどちらかです。

時間が経てはすぐに分かることですが、特にメンバーシップと投票権の購入に関して、人は背後に誰がいるのかを知りたがります。人は自分のお金がどこに行くのかを知りたがります。ですので、信頼できる個人やチームを持つことが重要だと思います。」

さらに、「より多くのメンバーが集まり、人々の会話が増えれば増えるほど、より多くのメンバーが他のメンバーの助力となることができます。」と付け加えています。

将来的にGorilla DAOのガバナンスの自律性を向上させるにあたり真の触媒となるのは、オンチェーンでの投票や提案が確立された後に,組織へスマートコントラクト機能が付加されることでしょう。

「私たちが目指しているのは、核となるインフラ(オンチェーンでの投票と提案)を整備した後、スマートコントラクトを実装することです。」とトンプソン氏は言います。

「ビットコインでは、スマートコントラクトはしばらくの間存在してきました。スマートコントラクトがあれば、私は本当に退くことができます。カスタマーサービスの懸案は残るかもしれませんが、それらは骨の折れる手動のものではなくなっていくでしょう。」