ビットコインSV技術基準委員会(TSC)は、2021~23年版ロードマップを公式発表しました。ロードマップでは、委員会がBSVコミュニティのステークホルダーと協力の上検討、提案、査読、そして実装する基準について詳述しています。
Bitcoin Associationが後援するTSCが目指すあり方は基本的に、BSVエコシステムに渡り実装される共通の技術基準の作成を通した業界の結束力の向上であり、その成功は業界のステークホルダーと事業者の参加によって実現するものです。ロードマップ構築の様々な段階で、TSCは関心を持つステークホルダーに対してロードマップ草稿への意見を求め、このコミュニティの相互連携に基づいて公開査読を実施しました。
ここで得られたフィードバックと査読プロセスにより、継続的なモニタリングと評価が行われることになるとTSCが認める「活きた文書」としてのロードマップ最終盤が完成しました。半年毎に公式ロードマップの見直しが行われ、TSCのメンバーがステークホルダーのフィードバックに基づき継続的に査読を行い、標準化の優先度の再評価を行います。
TSC自体は、基準を決めることはありません。技術基準の成熟のための枠組みとプロセスを提供し、ビットコインSVの相互運用性と普及加速を高めることを目標としています。
ロードマップ概要
ロードマップ最終版では、技術基準をウォレット、クライアントサービス、オンチェーンデータ、規制およびコンプライアンス、マイニング5つの分野に分けています。各分野には、その中で提案され作成されていく基準の注力項目について主要な取り組みも示されています。分野内の取り組みは、以下の通りとなります:
- ウォレット – SPVクライアントツール
- クライアントサービス – SPVクライアントサービス
- オンチェーンデータ – データおよびトークンの相互運用性
- 規制とコンプライアンス – FATFコンプライアンス
- マイニング – マイニングの相互運用性
前述の取組内容から明らかな通り、TSCロードマップではブロックチェーンの重要な各種側面と相互に機能するアプリケーション間での相互運用性を実現し、エコシステム内で取り組む開発者が環境から阻害されることなく製品の質とサービスで競い合う機会を保証することを目指しています。
標準化プロセスを通しTSCが実現を目指す結果のタイプの好例は、最近公表されたマークル証明標準化フォーマットであり、この基準ではマークル証明がビットコインSVエコシステム間でSPVクライアントに要求また提供されるその方法について定義されています。
この基準は、査読および助言期間を経た後、OpenBSVライセンスの元公表されました。この公表により、BSV決済の相互運用性が拡大することとなり、ブロックチェーン上での単純決済認証(SPV)サービスの構築にとって安定した信頼性の高いプラットフォームを提供することとなります。SPVとはビットコインSVの核心的機能にとって不可欠な構成をなすものであり、サトシ・ナカモトにより2008年に発行されたホワイトペーパーで描かれた当初のビットコインに最も近い形のブロックチェーンとなっています。ホワイトペーパーでは、SPVの運用によりユーザーがビットコインのフルノードを用いずとも支払いの受け取りと認証を実行できるものとしています。
TSCは、BSVエコシステムでの他の側面でも同じアプローチを取ることを狙っており、ロードマップにて5つの主要分野でその基準構築を狙うものと明確に述べています。委員会による包括的目標がより伝わりやすくなるよう、ここではロードマップに記載された5つの主要分野と各分野でTSCが定める標準化目標をまとめました。
ウォレット
標準化されたウォレットと他のビットコインクライアントツールでビットコインウォレットのユーザビリティ、セキュリティ、普及を改善
TSCは、ウォレットオペレーターにより容易に適用され高いレベルでのセキュリティと効率性を実現する事のできる基準を提案および実装することで、ビットコインSVウォレットとSPVクライアントの相互運用性を改善することを目指しています。
特に、TSCのロードマップではウォレットオペレーションの様々な側面が標準化プロセスで優先されることを定めています。対象は、ウォレット間での直接決済、事業者とウォレット間での決済リクエスト、決済認証、決済情報メタデータの暗号化および標準化されたログインプロトコルとなっています。
取組中のこの分野での基準には、BIP270およびSPVエンベロープ仕様提案があります。
クライアントサービス
サーバーサイドサービスおよびビットコインクライアントが使用できるAPIの標準化
TSCロードマップのこのセクションは、事業者とユーザーエクスペリエンス、そして効率的な運用に必要な各種機能を実現する各種ブロックチェーンサービスプロバイダーとの相互運用性の容易さに着目しています。
この分野でのTSCの狙いは、プロバイダーとクライアント間での情報のやり取りの仕方を標準化することで、SPVクライアントサービスのアクセシビリティを促進することにあります。目標には、ウォレット間でのオフラインまたは直接のピアツーピア通信、不正トランザクションの防止、トランザクション構築における手数料仕様、二重支払いおよびSPV証明通知のコールバックインターフェース、そしてサービス検出における標準化があります。
進行中または検討中の基準には、Paymail、mAPI、ナノペイメント交渉、SPVチャンネルなどがあります。
オンチェーンデータ
ビットコイン上でのトークン化されたデジタルアセットの実装と標準化
TSCでは、トークンがラップされブロックチェーンにデータが書き込まれる方法を標準化することで、トークン化されたデジタルアセットへのアクセシビリティの改善およびこれらがBSVエコシステムのアプリケーションに渡り相互連携出来るようにすることを目指しています。
このカテゴリでは、ロードマップはトークンプロトコルの表現および交換における標準化、将来のユースケースに備えたトークンプロトコル拡張、非標準トークンのラッピングによる相互運用性とMetanetデータ構造の実現を目標にしています。
進行中または検討中の基準には、エンベロープ仕様、UTXOベーストークン、プロトコル識別子があります。
規制およびコンプライアンス
規制要件へのコンプライアンスを促す基準によりビットコインの規律をさらに高める
ロードマップの規制およびコンプライアンスセクションでは、BSVブロックチェーン上で運営される事業が他のアプリケーションとの不整合なく関連規制を遵守することの必要性をTSCが認識していることを示しています。
このカテゴリでの目標は、検討中の基準を遵守することで、BSVブロックチェーン上で運営する事業者が規制に関する確実なコンプライアンス遵守を保ちながら、ユーザーのコンプライアンス不適合を排除することを中心に定めています。ロードマップは、仮想資産、および金融活動作業部会 (FATF) 推奨事項16項を遵守する仮想資産サービスプロバイダーの構造の標準化を念頭に置いています。また、仮想資産サービスプロバイダー間でのデータ交換およびメッセージフローの標準化も目標としています。
このセクションで進行中の目下の標準化案件はトラベルルールとなっていますが、TSCはKYC(本人確認)およびリージョンコード基準も検討しています。
マイニング
マイナーによるビットコイン上での提供可能サービスの商業化を支える基準
ロードマップの最終セクションでは、全体を通してマイナー間でのデータ交換およびネットワーク上でユーザーがマイナーとやり取りする際の相互運用性の実現に着目しています。こうした相互連携の標準化により、マイナーが同じ広さの市場のクライアントに向け公平な競争ができる環境でサービスを提供できるようになります。
目標には、マイナーと相互やり取りする際のAPIの標準化に加え、マイナー間でのデータ交換方法を定義する基準の策定があります。
ロードマップのこの分野で検討中の標準化提案には、マイナーIDおよび認証済チャンネルがあります。
以下に、新たに発行された2021~2023年のロードマップの図示を掲載しています。TSCのロードマップについてのさらなる詳細は、委員会の公式ウェブサイトをご確認ください。